愛は惜しみなく与う⑤
シンデレラ
部屋の窓から月明かりが差し込み
窓を背にして座り込むあたしの前には、月明かりが作り出した、あたしの小さな影ができる
いなくなりたいな
「もう疲れたよ」
そう呟いた時
月明かりが、あたしとは別の、人の形の影を映し出した
え?
ガタンと音がなる
誰かいる?
振り返るよりも先に、その影はあたしに近づきそして
「杏……おそくなってごめん。誕生日おめでとう」
あたしを後ろから抱きしめて、耳元で優しそう言う。
その瞬間時計が0時を指した
な、んで?
何が起こってる?
夢でも見てるん?
「……泉?」
あたしの部屋に現れたのは、関東にいるはずの…泉だった
おかしいやん
え?ナニコレ
「間に合わねぇかと思った」
そうニコリと笑う泉
しっかりと目に映す
いやいや…
「本物や…」
その手に触れてみれば、温かくて…大きな手は、あたしの知ってる泉そのものだった
おかしいやん
あたしの最後に会いたいって気持ちが、妄想で泉を作り出してるん?