愛は惜しみなく与う⑤
なぁ
泉はそれを伝えにきてくれたん?

誕生日おめでとうって言うために来てくれたん?



「おいで、杏」


見慣れないスーツの泉が手を広げた



この腕に飛び込めば、もう後戻りできひん


覚悟してここにきたのに


気持ちが揺らいでしまう



「本物なん?」



それさえも分からへん。だっておる訳ないやん。ここは関西やで?
それに東堂の家や

簡単に入れるところでもない


ましてやなんで、あたしのいる部屋の窓から入ってくんねん。


格子があったはずやろ




「待ってろって言っただろ?」

「ちゃうやん!来るわけ…ないやん」


泉はあたしの手を取り、自分の頬に触れさせた


「あったかいだろ?本物だよ。守りにきたから。もう…大丈夫だよ」



その言葉で

あたしの中で止まっていた気持ちが動いた



あたしは何回泉の前で泣くんやろう


ここ数日間、志木もおらんし不安で…
ましてや、サトルが婚約者って分かって。
鈴のことも、なんか疑ってしまう自分がいて…

ほんまに苦しかった
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