愛は惜しみなく与う⑤
でも、涙は出なかった


非現実的すぎたのもあるけど
悲しいとか寂しいとか…そんな言葉じゃ表せれへんくて。


泣く場所もなくて

泣いたらもう、頑張れへん気がして


あたしの頭を優しく撫でる手は、久しぶりの泉の温もりだった


あたしを抱きしめて泉はなにやら、ゴソゴソと動く


そして気づいた



「なに、これ」


涙できっと、ブサイクやったと思う。スッピンやしさ?眉毛もあんまないし…

でもそんなこと忘れるくらい…自分の首にかかる感触に驚いた



「誕生日おめでとう」



泉がもう一度いい、パッと自分の首元を見ると、キラリと光る、綺麗なネックレスが…

え?

勢いよく泉を見れば、口元を手で押さえて笑っていた


「もっとゆっくりこっち向けよ。首とんでいくぞ」


「え?なにこれ!」


「誕生日プレゼントだよ」


もうさ
あたし今日一日、驚いてばっかりで心臓もたへんわ。

でも泉のくれるサプライズは幸せやった


泉が…選んでくれたん?
あたしのために?わざわざ買って…わざわざ持ってきてくれたん?



「泉、サンタさんみたい」

「……サンタはクリスマスにやるよ」


やるんや
ふふ
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