愛は惜しみなく与う⑤
変なことを口走らないように、桜さんの唇にキスをする

求めたら応えてくれる

求めて欲しい、求めて欲しくない


色々な感情がグルグルしている。


わかってるよ。杏ちゃんを好きになる資格も、桜さんを好きになる資格も俺にはない。

分かってるんだ

だけど温もりや、優しさを、自ら手離す勇気がない。


弱いだけ
弱いままなんだ


腕の中で眠る桜さんの寝顔を見る


こんな男の腕の中で、安心して眠ってくれるんだね。ありがとう


ほんと、俺はどーしようもない奴だな




「ごめんね、桜さん好きだよ」


眠れそうにないから服を着る。
帰ろう

泊まったら明日帰りたくなくなるかもしれないからね。



桜さんの一人暮らしのアパートの扉を開けてバイクに乗る


閉じた扉の向こうで桜さんは目を閉じたまま呟いていた




「全部受け止めてあげるのに。臆病でも愛し方が分からなくても……私が与えてあげるのに。それじゃダメなのかな」



夜は肌寒いな


桜さんの本当の気持ちを俺が知るのは、もっと後の話……


-------

< 74 / 417 >

この作品をシェア

pagetop