愛は惜しみなく与う⑤
絶対見えました

「あー服?着替えどこ置いたっけ」

「お風呂に入るときにバスタオルと一緒に渡しましたよ」

もう!子供じゃないんです。
走ってバスルームへ行き、忘れ去られた着替えを回収する


すぐさま杏様に着るように促すと、暑いのに…とぶうぶう言いながら腕を通した

ふぅ


『志木の兄ちゃん、大変だな』

「ええ、本当に。疲れましたよ」


見えたのか見えてないのか、はっきりと泉と朔さんは言いませんけど。
ビデオ通話に切り替えた瞬間2人が固まったんで、驚いたんでしょうね

髪は濡れたまま、頬は火照り
バスローブを適当に羽織っただけの姿の杏様


最初の頃はご馳走様って思ってましたけどね。もう杏様が裸で走り回っていても、何も思わなくなりました。

むしろ風邪を引かないか心配


常に賢者モードなんでね、私は


じゃなきゃ杏様のお世話なんてできませんよ


ちゃんと着替えて、私のハンカチをポイッと放り投げて、携帯を覗き込む


「ごめんごめん、志木が煩くて」


この言いようです。でもまぁ、楽しそうですね。暗いまま眠らなくてよかった
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