泣かないデネブと嘘つきの夢
しばらくして、今度はすこしだけ大きな声でマナが言葉をこぼした。
「……でも、ヤヨは星になった。わたしたちを置いて、勝手にひとりで、星になったよ」
発したマナ自身も傷つく棘のような響きだった。マナは、声だけで泣いていた。
まるで、どこかで聞いているはずのヤヨに文句を言っているみたいで、カイは痛みを堪えるようにぎゅっと拳を握りしめた。
後悔って、透明なガラス瓶に閉じこめられて、どうしようもなく大きな川を流されていくときの気持ちだよ。それか、真っ白なシーツの上でひとを殺す夢をみたとき。
ヤヨについて、マナが今確かに思い出せるのは、最後に交わしたその言葉と、はちみつみたいな笑顔だけだ。透明な涙がとけていたはずの、割れたガラスのような記憶。
ひとつ足りない影がこの星空のどこかにあるとしても、アルトの声、まっすぐな足跡も、骨ばった輪郭も忘れていく。息をするたびにひとつずつ遠くなる。