泣かないデネブと嘘つきの夢
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マナが眠ったあと、カイは絡めた指を解かないまま、ようやく眩しい星空を見上げた。
ふわりとはぐらかしたけれど、マナの質問の答えを、カイは知っていた。
ヤヨが、自分とマナに会いたがっていること。そして、それと同じくらい、二度と会いたくないだろうということを。
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マナに内緒でヤヨに呼び出されたのは、ヤヨがいなくなる少し前のことだった。
「来てくれてありがとう」
「気にしなくていいよ。話って、なに?」
マナに秘密を作るのは気が引けたけれど、ヤヨの怖いくらいヒリヒリした雰囲気が、それ以上に苦しかった。
「あのね、最近よく夢をみるの。カイとマナがふたりで川辺に並んで座っていて、その川をわたしが流されていく夢」
ヤヨは泳ぎが苦手だった。落っこちたらどうしようと心配しているのを知っていたから、ぼくらは水辺ではあまり遊ばなかった。
「目の前で助けを求めても、ふたりとも話に夢中で、溺れているわたしに気づかないのよ。ひどいでしょう」
なにも言えずに立ち尽くすぼくに、本当はふたりともそんなことしないって、もちろんわかってるわ、とヤヨは笑った。
「それで次の瞬間、わたしはベッドで眠っているマナの心臓をナイフで突き刺しているの。真っ白なシーツに赤い血がどんどん広がっていって、最後の数秒、目を見開いたマナと目が合うと、いつもそこで目が覚めるのよ」