泣かないデネブと嘘つきの夢
「おかしいでしょう、怖いでしょう。わたしもわたしが怖いの」
話し終わった途端、ヤヨはがくりと膝を折って、両腕で自分を抱きしめるように震えていた。
慌てて駆け寄ると、消え入りそうな細い声が聞こえる。
「気がついたらこんな風になってしまってたの。どんなにだめだと思っても、どうにもならない力でいつもマナを傷つけてしまう。もう、気が狂っちゃったのかな」
ゆらりと顔を上げたヤヨは、泣いていなかった。
「どうしようもないくらい、自分のことが憎いの」
声まで震わせながら、ざっくりと傷ついた笑顔でヤヨは言った。
「ぼくになにか、できることはある?」
今にも壊れそうな小さな背中をためらいがちに撫でながら、ぼくはそっとたずねた。
そう口にしながら、だけど、ヤヨの答えはなんとなくわかっていた。
「ううん、なにもない」
「だってカイは、マナのことが好きだから」
ぼくを好きになってしまったヤヨ。マナを好きになってしまったぼく。
三人でいることが、なによりも大切なはずだった。
きっとヤヨは、三人のかたちを保てなかった自分と、同じ罪をおかしたぼくのことを、憎んでいる。