大正ロマンス
鈴が弥勒と結婚することになったのは、二年前に起きた大きな地震がきっかけだった。地震が起きた時に鈴は弥勒を助け、その後弥勒からアプローチされ続けて結婚することになったのだ。

「さあ、ご飯を食べよう」

弥勒はそう言い、部屋から出て行く。その時にふと鈴は不思議に思ったのだ。なぜ上流階級にいる弥勒が地震が起きた時、中流階級の人間が集まる住宅街にいたのかと。

大きなシャンデリアがぶら下がっているリビングで、メイドが作った朝ご飯を二人で食べる。その間も弥勒は優しげに笑い、隙あれば鈴の頭を撫でたりした。

付けられている小さな箱ーーーラジオから声が響き、テーブルの上に置かれた新聞は普通選挙法のことが大きな見出しとなっている。

「今日は帰りが遅くなるかもしれないから、先にご飯を食べて寝ていてね」

「はい。行ってらっしゃいませ」

朝ご飯を食べ終えた後、鈴は弥勒を見送って玄関のドアを閉める。そしてフウとため息をついた。今から重苦しい一日がまた始まる。
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