2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
自分の目から見えない場所に能力を使うことは見える場所に使うことよりもずっと難しい。しかも鎖を焼き溶かす為に継続的にそれをやらなければならない。
ゆっくり、ゆっくり。
細心の注意を払って鎖を焼き溶かしていく。
「泣けよ!泣き叫べよ!人間!」
「…っ!」
その間に何度も何度も妖に体を蹴られたり殴られたりした。あくまで私の顔は狙わずに。
この妖は今私を痛ぶることを心から楽しんでいる。死なない程度に私を痛めつけ、絶望に屈した私を見て悦に浸っている。
正直とても痛い。苦しい。だが私を痛ぶることに夢中になっている妖は私が能力を行使していることに気づく気配はない。
もう少しだから耐えるんだ。
「…っ!かはっ!」
這いつくばるように床に転がる私の口から大量の血が吐き出される。
「はははっ!いい気味だよ!人間!もう死にたくて死にたくて仕方ないでしょ!?」
それを見て妖はますます嬉しそうに歪んだ笑みを私に向け、また私を強く蹴り飛ばした。
ダンっ!と大きな音を立てて向こうの方の壁に私の身体が叩きつけられる。
「…は?」
それに驚いた声を出したのは妖だった。
鎖が繋がっていればその壁に私の身体が届くことは到底ないからだ。
「…本当に好き勝手してくれたわね」
ゆらりとその場から立ち、口の中にあった血をぺっ!と吐き出す。
それから口元についていた血を乱暴に手で拭き妖を睨みつけた。