2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






「あるわ!バチバチにある!」


妖の言動に混乱しながらもそれを否定してまた火を放つ。
その火は妖に当たるのは当たるが、全ては当たり切らず、なかなか致命傷を与えることができない。


「じゃあこの死なない程度の殺意のない攻撃はなんなんだよ?」


私からの攻撃を受けながらも致命傷にはならない為、おかしそうに笑って妖が今度はその辺で朽ちていた机を私に投げた。


「…っ!」


それを私はすぐに燃やした。
妖の言葉に動揺しながら。


「芸のない人間だな」


燃え上がる炎の中から妖が現れ、私を蹴り飛ばそうとする。

避けられない!

不意をつかれた攻撃になす術なく私はその蹴りをもろに喰らった。


「…ぐっは!」


妖に蹴られた体が床に思いっきり叩きつけられ、口から血と唾液が飛び出る。


「これが殺意のある攻撃だ」


そして畳み掛けるように狂気に満ちた笑顔で倒れる私に妖が飛び込んできた。


ああ、何故、私が妖の言動一つだけで混乱したのか。何故、動揺し、動きが鈍ってしまったのか。

悔しいがわかってしまった。
甘い私の考えが。


妖にだって悪人もいれば善人もいる。人間と全く同じだ。そう考えた私は龍にあの時言った言葉を思い出す。


『今までと同じやり方はしない。きちんと善と悪を見極めてその妖を裁く。私は私のやり方で優しい妖たちを守りたい。今日はそれを言いに来たんだ』


本当にそうしたい。私は周りの人間のように無条件に妖を目の敵にしていないから。








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