2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





*****



目を覚ますとそこには見慣れた私の部屋の天井が広がっていた。
ベッドに横たわる私の体は自分が思っていたよりも重く、自由が効かない。

本当に随分好き勝手にされたようだ。


「…姉さん?」


瞳を開けるだけ開けて現状を把握しているとそんな私に気づいた朱が泣きそうな顔で私の顔を覗き込んできた。


「しゅ、う?」


どうしてそんな顔しているの?

朱を少しでも安心させようと思い、朱の頬に触れようと右腕を動かそうとしたが、上手く動かない。おそらく骨折でもしているのだろう。


「姉さん!よかった、本当によかった…」


私と目が合った朱はと言うとそれはそれは安心したように笑った。
そしてそれが嘘かのように一瞬で笑顔が消えた。


「…姉さん。もう能力者なんてやめよ?もう任務にも行かないで。葉月家の屋敷の中でずっと一緒に居よう。家は僕が継ぐから。もうこんな姉さんは二度と見たくないんだ」


暗い表情で一筋の涙を流しながら朱が私に懇願する。その瞳には光はなく、まるで絶望に染まっているかのようだった。

こんな朱今まで一度たりとも見た覚えがない。
1度目から一度も、だ。

私が傷つくことに怯え続ける2度目の人生での朱の姿に違和感を覚える。

…まさか朱も龍と同じように2度目なのか。

絶対にそんな可能性はない。神様が記憶を維持させたのは私だけだと言ったからそう言い切れる。
だが、龍の存在と朱の今までの言動がそれを揺るがせる。










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