2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





まだ私は琥珀からも武からもそして朱からも大事にされているんだなぁ、と嬉しく思いながらも彼らを見つめる。

するとその中にいた蒼が泣きながら私を見ていたので私は思わず驚きで目を丸くした。


「…あ、おい?」


その涙に疑問を持ち、蒼の名前を呼ぶ。


「…どうしたの?」

「ん?あ、ああ。ちょっと、ね。何でもないよ。強いて言うなら紅が目を覚まして安心したってとこ」


私の疑問に蒼が飄々とした態度で答える。
本当にそんなことで蒼が泣くのだろうか。

蒼はこの中できっと一番感情が読みづらい。琥珀のように無表情ではないが、いつも笑顔で自分の感情をうまく隠しているタイプだ。

その蒼が人前で涙を流した。
感情を隠すことが上手い蒼のそんな姿一度だって見たことがない。

だが、これ以上聞いても蒼は私に何も言わないだろう。
なので私は蒼の返事に対して「そっか」と返事を返しただけでそのことについて深く追及しようとは思わなかった。



*****



それから程なくして今日はもう疲れているだろうからと蒼、琥珀、武、朱は私の部屋から帰って行った。

1人きりになったベッドの上から窓の外を見つめる。真っ暗な空には午前と同じように雲が陰り、月も星も何も見えない。

まるで私を暗い表情で見つめていた朱の瞳のような空だ。










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