2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
変えられるものは変えていきたい。
1.余計なことはしないように
初めてのあの任務から1ヶ月半ほど過ぎた。
2度目を始めた頃はまだ春だったが、あれからもう3ヶ月が過ぎ、季節は夏真っ盛り。
今日もいつもの日課である龍の所へやってきた私は今日も今日とて死ぬほど暑い日差しを木の影に隠れて何とか凌いでいた。
もう放課後で夕方なのだが、涼しくなる気配は一向になく、太陽は今日も絶好調だ。
『…で、腕の方はもう完治したのか』
「あ、うん。もうぜーんぜん痛くないよ」
いろいろな話をいつもの調子で龍にしているとふと龍が先月に負った傷の具合について冷たい声であるがどこか心配そうに聞いてきたので私は笑顔で祠の前で腕をぐるぐると回して見せた。
任務後は上手く動かなかったこの右腕も1ヶ月半ほどすればこの通り完治である。
「任務もなかったし、能力実技の授業でさえも禁止されたんだよ?さすがに治るよ」
ここ1ヶ月半の朱と愉快な次期当主たちの過保護さを思い出してつい苦笑いをしてしまう。
朱は朱で私の文字通り全ての世話をしたがるし、武、蒼、琥珀は怪我が完治するまでは能力を使う全ての可能性を排除したがった。
特に彼ら次期当主が「紅の絶対安静、その為の任務禁止、能力実技禁止」と強く言ってしまえば例え教師陣、能力者の上層部であっても口出しはできなかった。
唯一彼らに絶対の命令ができるのは四神の一家の現当主たちつまり、彼らの父親たちと麟太朗様のみだろう。
さすがにやりすぎだ、授業くらいは受けられると思い、
「今の時期に能力を使うなって言う方が無理なのでは?お忘れですか?守護者の選定の為にも周りに実力を見せつけないといけないのですよ」
と声を大にして主張したが、意外や意外、みんな私の主張なんて無視して、次期当主達の主張である安静にすることに賛成していた。
無理してでも力を示せ!って考えだと思っていたのに。特に我が葉月家の当主とか。
まあ、だからこそゆっくり休めて完治した今があるんだけどね。