2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
次は神様だ。
『神様。さっきのわざとだよね?』
武の問題が一応片付いたので今度は心の中で神様に呼びかける。
『わざと?さて、何のことでしょうか?』
『…とぼけないでよ。あの冗談懺悔が自分にされたものじゃないことくらいわかってたでしょう?』
『そうですね』
『…何が目的なの』
穏やかな神様の声は最初こそ私の言葉をおかしそうに否定していたが、すぐに否定することをやめ、肯定する。なので私は神様のその意図を聞いた。
『1ヶ月くらい前でしたね。アナタが私の言葉を聞かず、やっぱり誰も信じられなくて、1人取り乱して大怪我をしたのは』
『…』
神様が話し始めたのは間違いなく、琥珀との初任務の話だ。私は黙ってその話を聞く。
『私は何度も言いますがアナタにはもっと周りの人を信じてほしいのです。世界はアナタにもっと優しい、と。武にもきっとアナタがやろうとしていることを話せばアナタを多少は助けてくれるはずです』
『はっ、神様、それは違うよ』
神様の綺麗事に私は思わず鼻で笑う。
『神様の方が私より絶対わかっているとは思うけど、それでも世界の優しさなんてものは私にはわからない。実際1度目にこの世界の残酷さを見てきたしね。今は優しくても近い将来この世界は私にとって残酷になる。期待すればするほど裏切られた時キツいものだよ?だから私は期待しない。私が見てきたものを信じるだけ…』
『紅…』
『それに、守護者に絶対なるマン、努力の塊な武だよ?妖に寛容な訳がないじゃん。100%私に協力どころか邪魔してくるに決まってる』
神様が黙って聞くことに徹してくれたことをいいことに、言いたいことだけ神様に言うと私は今度こそ窓に手をかけた。