2度目の人生で世界を救おうとする話。前編




『紅、アナタが世界に絶望してしまっていることはよく理解できます。それだけ前回の世界はアナタにあまりにも残酷すぎました。ですがいいですか、紅。それでもこの世界は…』


神様が何やらまだ私に言いたいことがあるようだが、これ以上は時間が惜しいので神様の言葉を軽く聞き流し、窓をゆっくりと開けて人1人分通れる窓に上半身を通す。
あとは下半身も通して終了。

それだけなのだが。


「…」

「…」


窓の外には何故か腕組みをして立っている武がいた。お互いに無言で見つめ合う謎の時間が流れる。


な、何で。


とりあえず作戦変更だ。
内心焦りながらもまずは一度窓から身を引く。


「…!」


だがそれは腕を武に掴まれたことによってできなかった。
すごい形相で武に睨まれている。
これは相当怒っている。


「…手、離してくれないかな?この体勢はしんどいなぁ」

「いいぞ。ただしこんなことをした理由を俺に聞かせてからだ」

「…え、ええ〜。じ、自分のウエストの限界に挑戦した…みたいな?」

「…はぁ、もっとマシな嘘付け、このポンコツ」


私もそう思うよ、武。
苦笑いを浮かべる私に不快そうにため息を吐く武。
さすがの私でもこの状況ではなかなかいい言い訳が思い付かない。


『紅!アナタと言う人は!人の話の途中で!いえ!神の!話の途中で行動を起こそうなどどう言うことですか!』

「で?本当の理由はなんだよ?」

『言いなさい!紅!武は必ずアナタの味方になってくれるはずです!』

「…黙ってないで言えよ」

『言いなさい!』

「言え」

『言いなさい!』

「言え」


頭の中で怒っている様子の神様の叫び声と目の前で神様とは対照的に静かにでもやっぱり怒っている武が見事に交互に私に言葉をかける。

あー!もう!









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