2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「…武はさ、妖は絶対殺されるべき存在だと思う?」
「ん?なんだよ、急に。そんな当然のこと聞いて。当たり前だろ」
ほら。
私を見つめる武の目は何を言っているんだ、こいつ、と言っている。
おかしなものを見るような目。
仕方ない。武を始め、人間はみんな妖を絶対の悪だと教育を受けている。1度目の私も今の時点で同じ質問をされたら、間違いなく武と同じような答えを出すだろう。
「俺は違うと思う。殺されるべきではない妖もちゃんといる。妖も人間と一緒。悪い者ばかりじゃない。だから俺は殺されるべきではない妖を助ける」
「…」
眉間に皺を寄せる武に私は力強く言葉を吐く。
「…この祭りに現れた妖は人から物を取っただけだよ?それでも武はその妖を殺していいと思う訳?」
「…。ああ、今は物を取るだけでもいつか必ず誰かを殺すからな。今殺すことで未来の被害を減らせる。そうだろ?」
武が不思議そうに首を傾げる。
それが普通のリアクションだ。期待なんて最初からしていなかった。
「そうは思わない。だから俺は誰よりも早くこの祭りに現れた妖を見つけ出して誰かに殺されないようにする」
「…は?」
「俺の邪魔をするなら例え武でも叩き潰す」
真剣な私の言葉に理解できないといった感じで表情を歪ませる武。
私はそんな武を静かに睨みつけた。
武に掴まれていない方の手からボウ!と火を出し臨戦態勢に入る。