2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
3.欲しいものを手にして
あれから武と2人で祭りで賑わう境内を誰よりも早く妖を見つける為に早足で歩き回った。
その間、武が一切私の腕を離そうとはせず
「いつまで腕持ってんの」
とも思ったが、これはある意味私の今までの行動が招いたことなのですごく邪魔にならない限りはそれを甘んじて受け入れることにした。
ちなみに何故逃亡しようとしたことがバレたのか、何故あの小さな窓を逃亡ルートに選んだことがわかったのか気になって武に聞いてみると、
「お前の考えていることなんて大体わかる。何年お前といると思ってんだ」
と、呆れたように言われてしまった。
…言われた当の本人である私はと言うと、それに対して本当なのか、と疑ってしまったが。それなら私が1度目で1人になることなんてなかったでしょ、と。
「…」
武と時々言葉を交わしながらも妖を探し続ける。
妖には妖独特の気配が存在する。
人間とはどこか違うその気配は弱ければ弱いほどうまく隠しきれない。
日常生活での何故か嫌な感じとかは弱い妖の気配が原因である場合もある。
逆に強い妖が好き好んでやっている場合もあるが。
とにかく今回の任務の妖は弱い。
なので間違いなく妖独特の気配をうまく隠しきれず、すぐに見つけられる。
見つけやすい存在だからこそ時間がないのだ。
「武」
「何だ?」
「妖の気配感じる?」
「いや感じないな。ここにはいないだろ」
「…だよね」
探しても探しても見つけられない妖の気配。
ここにも妖はいないことはわかっていたが、一応武に気配の有無を確認するとそう淡々と答えられ、私は肩を落とした。
早く見つけないと前回同様、一年生のどちらかのペアに妖が殺されてしまう。
「…」
焦る気持ちを押さえながらも周囲を探る。
すると、ずらりと並ぶ屋台の裏の林の中に微かながらも妖の気配を感じた。
「居た!行くよ!武!」
やっと見つけた気配を逃さまいと私は武に腕を掴まれたまま、林に向かって走り出した。