2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
勝手に私が朱を拒絶した。
嫉妬したのだ。私とはまるで違う朱という存在に。明るく、誰からも愛されていた朱に。
本当は血の繋がりなんてなかった、両親の実の子に。私が次期当主になることにより、自由と平穏を手に入れた、私の犠牲の元で幸せに生きる朱に。
今でもそう思うと辛いが、それでも大好きだという感情が勝ってしまう。
本当に私は血の繋がりこそなかったが例に漏れずこの弟を愛していたのだ。
あの時の私はバカだったと思う。
「…っ」
もう二度と見られないと思っていた弟の姿を見て私は思わず泣いてしまった。
「姉さん!?」
突然泣き出した私を見ていつもなら我が家の体裁の為に私を兄扱いする朱が思わず私を姉扱いする。
「本当どうしたの?姉さん。何かあった?」
朱がひどく心配そうに私を見つめて私の手を優しく両手で握る。
シュンっと肩を落とす姿はこんな時だが大変愛らしく頭の上に垂れている犬耳の幻覚まで見えてしまう。