2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
いきなり走り出した私だが武は特に焦る様子もなく、私の腕を掴んだまま、私と並走する。
この冷静さはおそらく武もこの妖の気配を感じて動き出そうとしていたのだろう。
「…弱いな」
「うん」
妖の気配を辿りながらどんどん林の中へ入って行く。
武の言う通りこの妖はやはり弱い。
感じる気配がその弱さをわかりやすく物語っている。
走ること数分、その妖はついに私たちの目の前に現れた。
「…にん、げん?」
こぼれ落ちそうな程大きな瞳をした幼い男の子の姿をした妖が不安げにこちらを見つめている。
妖の姿は10歳程度の男の子でその頭には狐のような耳があり、お尻からはふわふわのしっぽが何本も生えていた。
大変可愛らしい姿をしているが、一目で人間ではないことがわかる見てくれでもある。
力が弱い為、人間に擬態しきれていないのだ。
「そうだよ。でもアナタの敵ではないから」
男の子の妖を怖がらせないように優しく微笑み、男の子の妖の方へと私は一歩踏み出す。
「…っ!」
しかしそれを見た男の子の妖の顔には一気に恐怖の色が浮かび、男の子の妖は一目散に林のさらに奥へと向かった。
逃げ足が早い!
能力を使えば捕まえられるけどそれだとあの男の子の妖を怖がらせてしまう!
能力を使わずして妖と渡り合うのは例え弱い妖が相手であろうとなかなか難しい。
人間と妖では基本的な身体能力に差がありすぎる。