2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
たった一瞬、戸惑った私だが武は違った。
私の腕を掴んでいない方の手を男の子の妖に向けて掲げる。
「…っ!」
パキパキパキッ
すると男の子の妖の足首は武が作り出した地面と直結している氷によって簡単に捕らえられてしまった。
武に捕らえられてしまい、身動きが取れない状況に男の子の妖の顔色が先程よりもますます悪くなる。
印象は最悪だがやってしまったものはしょうがない。今は男の子の妖を他の能力者に見つけられる前に逃すことが最優先である。
「…能力者なんだね」
「うん。だけどアナタを傷つけようと思っている訳ではないよ。俺は味方だから」
恐怖で声が震えている男の子の妖の言葉に私は優しい笑みを浮かべて何とか安心してもらえるように答える。
「嘘だ。僕のお父さんとお母さんも能力者に殺された」
「…っ」
だが、男の子の妖は私の言葉を辛そうに否定した。
そしてそれを聞いた私は表情を歪めた。
私が殺した訳ではない。
それでも同じ人間であり、能力者である私にとって他人事で済まされる話でもない。
「…ごめんなさい」
「お姉ちゃんが謝ってもお父さんとお母さんは帰って来ないでしょ。だから早く僕も殺して」
「…え」
苦しげに謝罪する私に恐怖の感情を抱えながらも、どこか諦めたように自分を殺せと男の子の妖が願ってきたことに私は一瞬困惑する。
「もう1人は嫌なんだ。ずっとずっと寂しかった。人間の大事なものを奪ってこの寂しさを埋めていたけれど、もうそれも今日でおしまいみたいだね」
そして男の子の妖の大きな瞳からツーっと一筋の涙が落ちた。