2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
この男の子の妖はもうずっと1人だったのだろう。
孤独だったからこそ、人間が大事にしていた何かで自分を満たすしかなかった。
だから今日も人間から大切な何かを奪った。
そんな孤独な妖を作ってしまったのは紛れもなく人間である能力者だ。
どういう経緯であれ、能力者がこの男の子の妖から全てを奪った。
だが、悲しいがこれが今の世界の現実だった。
人間もまた人間に害を及ぼす存在である妖を悪とし、消すことを望んでいる。そんな人間は妖から見れば同じく自分たちに害を及ぼす者。
終わらない負の連鎖だ。
「おしまいじゃないよ」
どうしようもない悲しい現実に私も泣き出しそうだったがそれを何とか耐え、口を開く。
どうすればこの負の連鎖は終わるのだろうか。
いつもそう考える。
私一人ではあまりにも力が足りない。
だけどせめて私の手の届く範囲でまずはこの負の連鎖を断ち切りたい。
私は自分の首にいつも隠すようにつけていたネックレスを外した。
シンプルな銀のチェーンにまるで私の名前のように赤く光る石の付いたそれを男の子の妖の前に差し出す。
「アナタの孤独をこれで満たせるかはわからない。だけどこれは俺の中で1番大切なものなんだ。アナタは一人ではないよ。どうかこれを俺だと思って持っていて欲しい」
「…っ!紅!それは!」
にっこりと優しく私は笑う。すると今までずっと黙ってこちらの様子を伺っていた武が驚いたように口を開いた。