2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
武はこのネックレスを私がどれだけ大事にしていたのかわかっているからだ。
だが、正確にはこれを本当に大事に持っていたのは1度目の私だ。
今の私にとってもこれは大事だが、1度目ほどではない。
「…アナタは能力者によって大切な存在を奪われた痛みを知っている。アナタが奪われた大切な存在とは比にならないけれどアナタもまた誰かの大切な存在を奪った者になってしまった。きっとまたアナタと同じ痛みを抱えている誰かがいるよ。だから悲しい繰り返しはもうやめよう」
どうか受け取って欲しい。
未だに驚く武の存在を感じながらも目の前の男の子の妖を真っ直ぐ見つめる。
すると男の子の妖はおずおずと私のネックレスを受け取った。
「…それはとっても悲しいね。お姉ちゃんもこれを渡したら悲しくならない?」
「ならないよ。だってアナタがこれからは俺以上に大切に持っていてくれるでしょ?」
「うん」
心配そうに私を見つめる男の子の妖に私は安心させるように微笑む。
「アナタは一人だと言ったけど一人ではない。これからは俺もいる…それから」
ここからは武にはあまり聞かれたくない話だ。
私は声のボリュームを下げで男の子の妖の耳元へ口を寄せた。