2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「聖ーヒジリー家と呼ばれる妖の屋敷を探して。場所はここからずっと東へ行ったところだったはず。そこにいる妖はアナタと同じような境遇で、みんなで集まって共に生きているから、きっと力になってくれるよ」
私の知っている情報を伝えてすぐに私は男の子の妖の耳元から離れ、先程と同じ距離に戻った。
私のおかしな行動に武は眉を潜めてこちらを黙って見つめているが今は私を問い正す気はないようだ。あくまで今は、だが。
聖家の情報は能力者たちに絶対にバレてはならない。
何故ならそこは弱い妖や行き場を無くした妖が身を寄せ合っている場所であり、基本的には人間にあまり害を及ぼさい部類の妖しかいないからだ。
もし能力者にバレようものなら例え人間に対して何もしていなくても能力者は彼らを殺そうとするだろう。
そんなこと許されるはずがない。
では何故そんな能力者に対してのトップシークレットを能力者である私が知っているのか。
答えは単純だ。
いつものことだが私が2度目だからだ。
1度目で私は妖側についた人間。聖家のことは知っているし、何より聖家は龍の庇護下にある屋敷であり、私もお世話になった場所でもあるからだ。
当時全てのものに裏切られた私に寄り添ってくれたのはあそこにいた優しい妖たちだった。
「この祭りには私たち以外の能力者もいるから早くこの祭り会場から離れてね」
「…うん。わかったよ、お姉ちゃん」
にっこりと笑う私に男の子の妖もにっこりと愛らしく笑う。
よかった!素直でいい子な妖で!
こんな酷い目にあったのだから人間のそれも能力者のことなんて信用ならないはずなのにまっすぐ私のことを受け入れてくれたことに私は安堵し、ほっと胸をなでおろした。