2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「武、能力を…」
解いて、と武に伝えようとしたが、ふと目に入った男の子の妖の足元からいつの間にか氷が消えていたことにより私はその言葉を飲み込んだ。
武は言わなくても私の伝えたいことがわかっていたようだ。
気が使える男である。
「さあ、能力ももう解いてあるよ。行って」
「ありがとう。お姉ちゃん、お兄ちゃん。これ、返すね。ごめんなさい」
改めて男の子の妖を見つめれば、男の子の妖は大きな風呂敷をその場に置いて申し訳なさそうに笑うと東の方へと走り出しその姿を消した。
あの男の子の妖は弱い。私が逃したからといってこの先、聖家に着くまでに能力者に会わずに生き延びられるかもわからない。
だけどどうか無事であって欲しい。
そう私は心の中で願った。
「…武、今日はありがとう」
男の子の妖を見送った後、私は風呂敷に手を伸ばしながらも武に今日の感謝の気持ちを言葉にする。
まさか本当に私の邪魔をする所か協力までしてくれるとは思いもしなかった。
「別に。俺はただ任務を遂行しただけだ。後のことは知らねぇよ」
ぶっきらぼうにただ私にそう答えた武の素直ではない姿におかしくて私は小さく笑った。
そして未だに私の腕を武が離そうとしないので私はそのまま空いている方の手で風呂敷を抱き抱えた。
「貸せよ。俺が持つ」
「は?いいよ。別に。俺が持つから」
そんな私のことを見ていた武が空いている方の手を風呂敷へと伸ばす。
だがしかし別に重たい物を持っている訳でもないので私はそれを拒んだ。
そもそも私は男だ。このくらい持てる。
鍛えてんだぞ!
女でありながら男であろうとする根性舐めんな!
「いいから貸せ」
「うわ!ちょっと!」
拒まれたことが気に食わないのか武は一瞬私を睨むと強引に私から風呂敷を奪った。
いきなりのことだったのでさすがに私も手を離してしまった。
「急にどうしたのよ?」
「こういうのは男が持つものだろ」
「だったら別に俺が持ってもいいだろーが」
「…バカなのか、お前。紅は女だろ」
「…は?」
訳が分からなくて武を問い詰めれば変な物を見るような目で武が私を見つめてきたので私も同じように変なものを見るような目で武を見つめた。
いや、実際変だし。