2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
そんな私に対して武は「お前、ついに自分の性別さえわからないほどのバカになったのか?」と眉をひそめている。
はぁ!?である。
いやいやいや!
1度目でも2度目でも私は武の同性の友だちだった。女扱いなんて一度たりともされた記憶はない。
それがなんだ。今まさに女扱いされているではないか。
「…屋台の食べ物に危険な薬物でも混入してたのかな」
「何でだよ」
「いやだって武の様子がおかしいから。これは薬物によっておかしくなっている線が濃くない?」
「濃くねぇよ。失礼な奴だな」
まじまじと武を見つめて半分本気、半分冗談を言うと武は呆れたように肩を落とした。
「…武」
「今度は何だよ」
「さっきのあの男の子の妖を見ても今の世界は正しいと思う?」
武にこんなことを聞いてどうするのだろうか。
だが、私は気づいたらこのことについて武に聞いていた。
答えはわかりきっているが、それでもどこかで世界は変われると希望を持ちたい私もいる。
「…あの妖だけじゃあ、何とも言えねぇだろ。それに次期当主であり、守護者候補の俺たちが妖の肩を持つことはあってはならねぇ」
武からわかりきっていた答えが淡々と返ってきた。だが、武の表情だけは予想とは違った。あれだけ冷たい言葉を放っていた武だが、武のその表情はとても辛そうだった。
どんなにこの世界のことを嘆いても私たちは能力者の上に立つ人間だ。能力者にとっての道筋でなければならない。そんな存在があやふやでは組織が成り立たないからだ。
だから武は言葉ではああ言うしかなかった。