2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
2度目の可能性がありそうな者については大体目星が付いている。
だがそれを確かなものにできないのが現状だ。
私はこの世界の神であり、シナリオと同じように絶対の存在なのだが、1度目と同様に何故か人間に深く干渉できない。
本来の私なら人間の行動を変える為にちょっとした神からのお告げを言えたり、心の中を勝手に覗き見たりできるはずなのにそれが上手くできないのだ。
紅だけが唯一私と一度神域で関わった為かそれができる。
2度目を始めたからこそわかり始めた違和感。
この違和感の正体をせめてシナリオが本格的に歪み始める前に突き止めなければ前回と同じ結果になってしまうのではないだろうか。
それだけは避けたいところだ。
「…さて」
小さく息を吐いて、紅ではないとある存在を見つめる。
今見つめている存在こそ、この世界の中で今最も気になる存在だ。
1度目の時は何とも思わず見ていた存在だが、よくよく考えてみればどうもその者からもどこか違和感を感じる。
だから私は今日も紅からの呼びかけを聞き流してまでも、違和感の正体を見つけ出す為に世界を見守り、シナリオと見比べる。
その者を中心にして。
それでもシナリオはまだ歪んでいない。