2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「兄は熱で倒れたと伝えたはずですが?もう少し静かにして頂けますか」
おかしな光景に冷たい空気を纏った朱までも加わる。
「葉月家の医師団は全員連れて来られましたか?」
「もちろんでございます。紅様の一大事、何があっても対応できるようにこちらの準備は万全です」
「…そうですか。では兄をよろしくお願いします」
「はい」
淡々と話す朱と冗談一切なし、大真面目に受け答えをする医者を何となく見つめ続ける。
え。
なんか頭回らなくてよくわかんないけどただならぬ空気は察知できる。
おかしなことになっている気がする。
そしてあれよあれよという間にいつも私を診てくれている担当医による診察が終わった。
その間他のたくさんいた医師たちは私の担当医に
指示されて部屋の外に出されていた。
まあ、そうしないと私が女だということがバレかねないからね。
私が女であることを知っている医者はこの昔から私を診てくれている医者しかいないはずだ。
「いつもの夏風邪ですね。薬を飲んでよく寝てください。きっといつものようにすぐ治ります」
「わかりました。ありがとうございます」
私の担当医がそう朱に伝えて朱に年に一度見る薬を渡す。それを受け取った朱は愛らしい顔を引き締めていつもよりも何倍も大人に見える表情で頭を下げていた。
あまりにもしっかりしている。
これではどちらが兄かわからない。