2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
ここはしっかりと私の羞恥心の為にもお断りしなければ。
「…朱、よく聞いて。俺は見ての通りもう元気だから着替えくらい一人でできるよ。朱の手伝いはなくても大丈夫」
「でも病み上がりだよ?心配だよ」
「いやね?確かに病み上がりだけど着替えに心配要素はないからね?心配ご無用」
「…僕に手伝われるのがそんなに嫌?」
「…ゔっ、ゔ、ゔゔ、い、い、嫌…」
「…え」
「嫌ではないです」
「よかった!」
お断りできなかった。
最初こそは強い意志で朱の手伝いをお断りしていた私だったが悲しそうな朱の顔にまた負けてしまった。
満足そうに笑う朱の笑顔が眩しい。
もうこれはある意味お決まりな流れな気がする。
サラシだけは本当に勘弁して欲しいのでそれだけは譲れないと一生懸命朱に伝えて何とかサラシだけは自分で新しいものに巻き替える。
その間もちろん朱にはこちらに背を向けてもらっていた。
「兄さん」
「ん?」
サラシを巻き終え、今度は朱に手伝われながら着替える。恥ずかしさで死にそうだがその思いに蓋をして無の境地にいるとそんな私をふと朱が呼んだ。
「父さんからのネックレスはどうしたの?ここ3週間くらい見当たらないけど」
朱が探るように私の首元に視線を向ける。
そこは夏祭り前までは父からのネックレスがあり続けた場所だ。
今はもちろん何もないが。