2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
なんて答えればいいのだろうか。
妖にあげました、は絶対に言えない。能力者でしかも次期当主でさらには守護者候補としては一番不審がられる答えである。
「…な」
「な?」
「…失くした」
「え?」
俯いて発せられた苦し紛れな私の答えに私自身心の中で頭を抱える。
絶対に不審がられる自信しかない。
「そうだったんだ。早く見つかるといいね」
「…あ、うん。ありがとう」
だが朱は私の予想に反して私の不審な答えに特に触れることはなく、心配そうに笑っただけだった。
拍子抜けだがそれと同時に私はとりあえずは安心した。
「…」
私を見つめる朱の目の奥が笑っていなかったことに私は気づかない。
*****
夏休みとは自由である。
寮生活なので朝、昼、晩のご飯の時間だけは決まっているが、後は授業もなく、自由に過ごせる。
今日も病み上がりではあるが本当にもう元気なので特に部屋に篭りっぱなしになることもなく自由に夏休みを謳歌していた。
そして夕方。
まだまだ日差しが強く、暑い中、私は今日も龍の祠の元へやって来ていた。
『人間はやはり脆いな』
昨日夏風邪を引いてしまって大変だった話を龍にすると龍の第一声はこれだった。
冷たくどこか人間を見下している感じがひしひしと伝わってくる。