2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





龍の話によれば本当に弱いほんの一握りの妖のみしか風邪を引かないらしい。
妖にとって〝風邪〟とは、あまりにも妖たちには無縁すぎるもので、妖の中ではほぼ都市伝説みたいなものなのだとか。


「じゃあ龍も風邪引いたことないの?」


半信半疑で龍の話を聞いた後に龍の祠に疑念の視線を向ける。

いくら妖が人間より丈夫だからってそんなことある?


『…記憶にはないな』


すると龍はそんな私に呆れたように答えた。
完全否定しないということは大昔に風邪を引いたことがあるということなのだろうか。

気になる。
だがこの答え方をした龍にこれ以上何かを聞き出せる気はしない。


だから私は気持ちを切り替える為に話題を変えることにした。


「そう言えば龍、この前の夏祭りのお土産のミサンガになんて願い事したの?」


首を傾げながらも龍の祠に付けられているグレーと金のミサンガを私は見つめる。

あれはご存知私が夏祭りの時に龍に買ったミサンガだ。
夏祭りが終わった次の日にはこのミサンガを龍の祠に私が勝手に付けた。


『はい!龍!お土産!』

『…紐?いらないな』

『紐じゃなくてミサンガ!願いを込めて身につけておくと切れた時に願いが叶うんだよ』

『いらないな』

『なんでよ!』


と、いった感じの龍との口論の末、何度も言うが私が勝手に龍の祠に付けさせてもらった。

龍が泣いて喜ぶスペシャルでファビラスなお土産を選んできてみせるつもりだったが結果はこんな感じだ。
だが本気で嫌がっていれば絶対に祠に勝手に付けることさえも許さないはずだろうから嫌ではないのだと思いたい。






< 185 / 296 >

この作品をシェア

pagetop