2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「紅はどう思っているのかな?」
「…そうですね。俺は…」
生返事を続けていると麟太朗様に意見を求められたので私は考え込むフリをして口を開く。
内容こそよくわからないがここでも適当に話を合わせておこう。
粗相のない範囲で何とかしよう。
「よくわからないですね」
「そうか。紅はそう思っているだね」
肯定でも否定でもない、曖昧な言葉。それでもこれが話を聞いていなかった私の無難な答えだった。
麟太朗様はそんな私を見て興味深そうに微笑んでいる。
どうやら変な答え…もしくは失礼な答えではなかったようだ。
「妖という存在は絶対の悪だよ。そこに迷う要素は一つもない」
「…っ!」
にっこりと微笑む麟太朗様の目の奥が全く笑っていない。
うっわ、数秒前の私のバカ!
答え大間違いしてるよ!
麟太朗様の地雷を思いっきり踏んでしまっている!
麟太朗様の様子を見て冷や汗をかく。
だが私はそこで折れずにグッと両手に力を込め、自分を奮い立たせた。
丁度いい機会だ。
地雷を踏んだついでに地雷の上でタップダンスを披露してやる!
「…お言葉ですが麟太朗様。果たして本当に妖こそが絶対の悪なのでしょうか。妖には妖の事情があるかと。彼らも俺たちと同じ考えられる生物であり、感情があるのですから」
まっすぐ麟太朗様を見つめて真剣に言葉を吐く。
夏祭りの時に武に妖について意見して以来誰にも言っていなかったこの意見。
だが私は私が今度こそ手に入れたい未来のために少しずつでも能力者たちの考え方を変えていかなければならない。
せめて全ての妖が絶対の悪であるという考え方を。