2度目の人生で世界を救おうとする話。前編





「…」



荷物を詰め終え、カバンを持ち、顔を上げると私を待っていた武の姿が目に入る。
武は切れ長の不機嫌そうな瞳で私をまっすぐ見つめていた。


私は武が友だちとして大好きで大切だ。

それでもあと半年もすれば武は私から離れていってしまう。

2度目の最初こそは1度目の経験もあり、壁を作って、自衛をしていたつもりだった。だが、それもなかなか上手くいかず、今に至る。

これではきっと1度目と同じことを繰り返すことになる。

きっと私はまた傷つくのだろう。
もう自分も世界も全てがどうでもよくなってしまった1度目のように。



「…紅?準備できてんだろ?帰るぞ」

「…あぁ、うん。ごめん。お待たせ。帰ろ」



暗い必ず来るであろう未来について考えて暗い気持ちになっていると武が少しだけ眉間に皺を寄せて私に声をかけてきた。

不機嫌顔で大変わかりづらいがこの表情は私を心配している表情だ。







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