2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
side龍
「嘘がお上手ですね、龍」
『…俺のおかげで騒ぎにならずに済んだんだぞ。礼が先だろう』
「それは失礼致しました。先程はありがとうございました」
紅が去ったのを見て入れ替わるように暁人が俺の前に現れる。
暁人は印象的な赤い瞳を細めて楽しそうに笑っていた。
紅が感じた妖の気配はこいつのものだ。
紅は限界ギリギリまで気配を消している暁人の存在にきちんと気づき、しかも一切視線を向けることなく正確に暁人に攻撃を仕掛けた。
妖の侵入など絶対に有り得ないはずのこの場所で油断しているにも関わらず、だ。
やはり歴代最強と言われただけのものを紅は持っている。
だからこそ俺はあの時1人になった紅に手を差し伸べた。
例え憎い人間であっても、その人間を滅ぼせる力ならば欲しい、と。