2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






では何故妖である暁人がここへ居られるのか。
答えは単純だ。俺が暁人をここへ呼んだからだ。


紅には先程今の俺には何の力もない、無力だと伝えたが、あれは紅を欺く為の嘘だ。
本当は1度目と同じように俺の封印は夏の終わり頃から徐々に解け始めており、僅かながらも今の俺には力がある。

その解け始めた僅かな力を使って俺は暁人をここへ呼んでいた。
俺の力があってこそ暁人は今ここに居られる。
俺の力がなければ例え俺に次ぐ力の持ち主の暁人であってもここへは簡単には来られないだろう。



「それでは先程のこともありますし手短にいきましょう」

『ああ』



丁寧な口調で落ち着いているようにも見えるが、それでもいつにも増して周りを警戒している様子の暁人の言葉に俺は短く返事をした。

先程、紅にいきなり攻撃をされたことが気にかかっているようだ。
おそらくあんなことができるのは今の時点では俺の知っている限り紅以外いないがそれを伝えようとは特には思わない。

油断しているよりも警戒している方がずっといい。








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