2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「正気ですか?何か悪いものでも口にしましたか?」
俺の祠を信じられないものでも見るような目でまじまじと暁人が見つめる。
そして暁人は笑顔だが思い詰めた瞳で「封印生活が長引くとこんな症状も出てしまうのか…」などと1人ブツブツと呟き始めた。
『正気だ。あれ…紅は俺たちの味方だ』
「?守護者に選ばれる者など間違いなく敵ではないですか。見誤る余地さえもありません」
『それでも味方なんだよ』
「意味がわかりません」
俺の説明不足なのもわかるが1度目の記憶を持たない様子の暁人に全てを説明する気にはなれないので事実だけを伝える。
なのでもちろん暁人は納得していない様子だ。
「…まあ、わかりました。貴方は言わば妖の王、大厄災です。貴方の命令とあらば従うしかないでしょう」
しかし暁人は納得はしていないが頷くしかないと察し、大きなため息をついた後、そう言って頷いた。
「…お気に入りの人間、なんですね」
スッと目を細めて笑う暁人の瞳に映っているのはおそらく俺の祠に付けられている紅が勝手に俺の祠に付けた灰色と金色の紐で。
『そう思ってもらって構わない。もう一度言う。紅に傷一つ付けるな、絶対に』
「仰せのままに、我らが王、大厄災」
俺は再び念を押すように暁人にそう言った。
暁人はいつものように笑いながら丁寧に俺に頭を下げた。
どこか戯けた様子で。