2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「まあまあ琥珀。でも琥珀の言うことが本当だったら何か俺たちに隠し事があったりして。ねぇ、紅?」
私に疑いの視線を向け続ける琥珀を宥めた後、今度は蒼がいつもの笑顔で私を見つめる。
笑顔で巧妙に隠しているが、何か疑われているのは確かで。
「別に。隠し事なんてないよ」
嘘です、あります。
私は自分の〝隠し事〟がバレないようにすぐに蒼と同じような笑顔を顔に貼り付けた。
今、私は2度目の真っ最中で、実はこれから妖が襲撃してくるからそれに備えているんだよ!何て口が裂けても言えない。
蒼たちにとっては意味がわからない上に現実味が全くない話だからだ。
最悪私の頭を疑われる。
「そう」
「うん」
蒼と私はお互いに胡散臭い笑顔で見つめ合う。
お互いがお互いを信じていない空気がダダ漏れである。
「とりあえずご飯食わね?ほら、紅、お前は特に食わないと明日死ぬぞ?」
そんな私たちを見かねたのか呆れた表情で武が私たちの会話に入ってきた。
そういえば話に夢中でご飯を食べる手が止まっていた。
武に言われるまで気づかなかった。
「…そうする。でももうお腹いっぱいだからこのご飯はあげるね、武」
「いや、それくらい食えよ。死ぬって言ってるだろ?」
正直もうこれ以上私のお腹は白米を受け付けない。だから隣の武のおぼんにご飯入りの茶碗を置こうとするがそれを武は眉間に皺を寄せて拒否する。
「いや無理。食べれない。お腹が破裂する」
そんな武の拒否に負けじと私は武に茶碗を押し付けた。
そもそも男子用のご飯の量なのだ。
男のフリをしているとは言え、女の私の胃袋に入り切るわけないだろうが。