2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「…死ぬぞ?」
真剣な表情で武が私に訴えかけている。
その武の表情は第三者から見ればまるで怒っているような表情だった。
…まあ、正しくはご飯を拒否する私を心配している表情なのだが。
「…死なないんで。どうぞお願いします」
「じゃあ貸し一つな」
「えぇ、こんなことで恩売るわけ?小さいなぁ」
「…あー。腹一杯だわ、ごちそーさ…」
「ありがとう!武!本当感謝してる!」
必死に武に頭を下げる私を見て武は「最初からそうしてればいんだよ」と意地悪く笑い、私からご飯入り茶碗を取った。
「紅、覚えてろ。これで貸し一つってことをな」
「はーい」
ニヤニヤ笑う武に肩を落として返事をする私。
「本当仲良いね」
「…だな」
そんな私たちを見て蒼と琥珀は珍しく同じ表情を浮かべていた。
それはとても優しい笑顔だった。