2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
4.満月の夜に
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『兄さん無茶はしていないよね?』
「もちろん」
武たちとの夕食後、施設内に用意された自分の部屋に戻ると私は朱に電話をかけていた。
合宿前からずっと『絶対電話してね』と朱から念を押されていたからだ。
『怪我もしていない?』
「していないよ」
スマホ越しから聞こえる朱の声はどこか不安げだ。
だから私は朱を安心させるように意識して優しい声で朱との会話を続けていた。
朱は相変わらず過保護で心配性すぎるな、と思う。
最強であるはずの私をあまりにも心配しすぎだ。
我が弟ながら心配性だが、そこに大きな朱からの愛を感じるので悪い気はしない。
顔が自然とニヤけてしまう。
『…かすり傷一つ許さないからね』
「それは難しい注文だね」
『本気だからね』
「はいはい」
本当、過保護だな。
朱と話しながら窓の外に視線を向ける。
今日の空には大きな満月が浮かんでいて、夜だというのにどこか明るい。
もうすぐこの美しい満月の夜に妖たちによる襲撃が始まる。