2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
妖たちによる襲撃が今晩だということはわかっている。
だが、どこからそれが始まったのか私は知らない。
なので私はこれから施設全体が見える高台…この施設の屋根にでも登り、妖たちの動きを監視することにした。
高台で妖の動きに注意し、怪しい動きを察知し次第教師陣に連絡、早期に対応してもらい、襲撃による被害を軽減させる。
完璧な阻止はなかなか難しいのでせめて死者を絶対に出さないことを目標に動くつもりだ。
ガラガラ、と窓を開けると外から入ってきた冷たい夜風が私の頬を撫でた。
そして私は夜風の冷たさを感じながらも窓枠に足をかけ、雨樋などをうまく使い、屋根に登り始めた。
「…ふぅ」
こんな時には決まって自分の〝火〟という攻撃しか脳のない力を残念に思ってしまう。
私の能力が火ではなく風や水ならすぐに登ることができるのに。
火はただものを燃やすことしかできないのでこういうことは純粋な自分の身体能力でやるしかなかった。
「よし」
何とか屋根に登った私は大きく息を吐いて周りを見渡す。
一箇所を見ている訳にもいかないので歩き回りながら異変を探っていくことにした。
今のところは特に何か変わったことはない。
「…」
いや、あった。
私の視界に月明かりに照らされた美しい妖が入る。
濃い藍色の肩につくほどのサラサラの髪に真っ赤な瞳。
20代半ばに見える甘い顔をした美青年。
美青年があの暁人であると私は一瞬でわかった。