2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
暁人は龍に次ぐ妖界の実質No.2だ。龍以外の指図は誰からのものでも気に食わなければ受け入れないはずだ。
人間である私に傷一つつけることを許されていないなどもってのほか。
絶対に従いたくないはずだ。
それを暁人は受け入れ従っている。
暁人がこんな命令を受け入れる相手なんて1人しかいない。
「…」
龍だ。
私は何も言わずにただまっすぐ暁人を見つめた。
この憶測が正しければ龍が私に嘘をついたことになる。
今の龍には何の力もなく、誰かと繋がることは不可能だと龍自身がそう言っていた。
だが、龍は今この時点で暁人と繋がっていたのだ。
…龍がどこまで私に真実を話し、嘘をついているのかわからない。
私自身が龍の絶対の味方でありたいと思っていても龍本人は私の絶対の味方であってはくれないらしい。
もう手放しに龍を信じることはできない。
「…今すぐ妖たちに撤退の指示を出して」
今はここにはいない龍のことより、惨劇の阻止をしなければならない。
私は一度龍のことを考えることを辞め、暁人に強くそう言った。
「何故?私が貴方の指示に従う訳がないじゃないですか。それに私が言ったところで止まるような連中ではありませんし」
ちらりと暁人の視線が合宿所の向こう側に向けられる。
「…っ」
暁人の視線を追うように私もそこへ視線を向けると、そこにはたくさんの妖が集まっており、合宿所に向かっていた。
襲撃が来る。