2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
これはきちんと説得しなければ。
この状況で私は避難している場合ではないのだ。
「先生の言い分はわかりました。ですが今は緊急事態、少しでも妖に対応できる能力者が多い方がいい。そうですよね?」
「はい。その通りでございます。ですから…」
「この中で1番強い能力者は誰ですか」
「…紅様です」
淡々と話し始めた私に男性教師が丁寧に相槌を打つ。
彼は今お世辞や義務で私が1番だと言ったのではない。
事実を言ったのだ。だから彼はこの後の私の言葉も察して苦虫を噛み潰したような顔になった。
「1番強い俺だからこそ俺が動くべきです。異論は認めません」
「…はい」
もう何も言えないのだろう。
男性教師以外の教師たちも助け舟を出そうとせずただこちらを固唾を飲んで見守っているだけだった。
「…紅様」
教師陣の中でも年配のベテラン男性教師が一歩前に出て私の名前を呼ぶ。
「私たち教師としては生徒である紅様の安全が第一であり、妖対応に関しましても、最低でもペアでの行動を望んでおります。ですが紅様はそれをお望みでないご様子。紅様のご要望、承りました。どうぞ我々と共に戦ってください」
「ありがとうございます」
「いえ。感謝を述べたいのはこちらでございます。ですがどうかご無理はなさらず。そして必ず生きてください」
「はい」
今度はベテラン教師が丁寧に私に頭を下げる。
私はそれに応えるように強く返事をした。