2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






*****



月明かりだけが差す、薄暗い合宿所内の廊下を走る。
私に与えられた仕事は施設内の担当するエリアの生徒の保護、妖対応だ。

まずは生徒の安全確保が第一でそれから妖を退治する。

今日ここへ攻め込んで来ている妖はみんな人間を殺す気しかない。
今日はなるべく殺さないように、しかし私自身が殺されないように力の調整をしながら妖対応をしなければならなかった。

油断はしすぎない。油断すれば死ぬのは私だ。



「紅!」



妖にも生徒にも未だ遭遇せず、廊下を走り続けていると聞き慣れた声が私の名前を呼んだ。


「…」



一度立ち止まり、聞き慣れた声…、武の声の方へ振り向くとそこには蒼、琥珀もいた。



「お前は!緊急避難命令が聞こえなかったのか!?ペアを組んでまずは食堂へ避難だろうが!お前のことを部屋まで迎えに来てみればいねぇし!どこほっつき歩いていやがった!」



ずんずんずん!と力強くこちらへ歩いてくる武からものすごい怒っている感情が伝わってくる。


…これは予想していなかった。
まさか武が私を迎えに来ていただなんて。



「そうだよ、紅。こんな時に一人で行動だなんていただけないな」

「武と蒼の言う通りだ。さっさと避難するぞ」



武の後ろから困ったように笑う蒼といつも通り無表情の琥珀が私を見つめている。

2人とも武のようにわかりやすい怒りを露わにしている訳ではないがきちんと怒っている感情が伝わってきた。


私なんて心配されるような対象ではないと思うんだけどな。
実力あるし。この中の誰よりも強い自信しかないし。








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