2度目の人生で世界を救おうとする話。前編






蒼と私が担当している合宿所内を先程と同じように走り続ける。

蒼と共に行動し始めて数分は経つが、未だに生徒にも妖にも遭遇していない。


蒼の能力である、〝風〟の能力は融通が効きまくり、便利な能力だ。

戦闘には不向きな能力だが、その風で人を飛ばす、自分自身が飛ぶ、早く走るなど幅広い動きができるほかに、強い能力者ならその風に乗せていろいろな音を拾い、情報を集めることだってできる。

もちろん蒼も情報を集められる。
なので蒼は先程から風で情報を集めながら私の隣を走っている。
しかも風の力で私と蒼、2人分の走力も上げて。

先程蒼が「探索、保護を優先で動くのなら風の能力者である僕が適任だ」と言ったのはこれが理由だった。

風の能力は本当に便利だし、何より使い手があの蒼なので可能性は無限大なのだ。


私の攻撃一辺倒の火の能力とは訳が違う。



「…声、聞こえた。こっち」



先程からずっと真剣な表情で黙っていた蒼だったが、急に口を開くと急いで階段を駆け上がり始めた。
私も置いて行かれないように蒼について走る。



階段を登って右側、廊下のずっと奥に禍々しいオーラを纏ったドロドロの大きな泥の塊のような妖が今まさに尻もちをついている生徒に襲いかかろうとしている場面が目に入る。



「…っ!」



ここからあそこまで距離がありすぎる。

この距離では正確な攻撃は難しい。
今すぐ助けないと生徒たちが殺されてしまう!










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