2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
立っているだけでも辛そうだ。
さらに男子生徒の後ろには意識を失い倒れている男子生徒が2人もいた。
「…あまりよくない状況だね。急ごうか」
状況を確認しているとすぐ横に困ったように笑いながら蒼が現れた。
蒼の言う通り、この状況はあまりよくない。
さすがの私と蒼でも戦闘不能の生徒を3人も完璧に守りながら泥の妖と闘うのはあまりにも難しい。
全員の安全を優先するなら今すぐ撤退するべき状況だ。
「そうだね。蒼は3人と一緒に撤退して。俺はこの妖を片付けてから後を追うよ」
真剣な表情で蒼に返事をして私は泥の妖の方へと体を向ける。
泥の妖はまだぐったりと倒れているが、おそらくもう数分もしないうちに回復してこちらに襲いかかってくるはずだ。
そうなる前に戦意喪失させるか、最悪殺してしまわなければこちらも命に保証はない。
蒼が風の能力者で全員の避難、その間に私が妖と戦う。
それが今できる最善だ。
「待って」
今後の展開について考えていると蒼は聞き慣れない低い声でそう言って私の右手を掴んだ。
「?」
私の考えは完璧だ。
蒼だってわかっているはずだし、反対する理由なんてないはずだ。
不思議に思いながらも私は一度蒼の方へ視線を向ける。
すると蒼は全く笑いもせずこちらを見つめていた。