2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「紅だけ置いて逃げろって言うの?そんなことする訳ないでしょ?」
「え?」
蒼に握られた右手が痛い。
その痛みが絶対に離さないと言われているようで混乱してしまう。
蒼の行動の意味がわからない。
何故最善の策を選ぼうとしないのか。
「蒼、離して。蒼が風の能力で3人を運んで逃げる。で、俺がきちんと逃げられるように足止めをする。それが最善でしょ?」
「違う。最善は全員で逃げることだよ。紅だけ残る必要はない」
「確かにそれが理想だけど4人も引き連れて妖を振り切るほどのスピードは出せないでしょう?。それにどの道妖の対応しないといけないし」
「…」
不満げに蒼が私を見つめている。
だが、それ以上は何も言えない様子で蒼はこちらを見つめたまま黙り込んだ。
「とにかく急ごう!早く動かないと妖が回復するから!」
黙ったまま私の右腕を掴み続ける蒼から逃れようと思いっきり手を振る。
「…わかったよ。その代わり紅には僕たちと一緒に逃げてもらう。紅は逃げながら妖の対応をして」
すると蒼はしぶしぶ私にそう言って、じっと私を見つめた。
私の〝いい〟返事を待っているのだろう。