2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「…わかった」
私はもうそう答えるしかなかった。
そう答えなければ蒼はずっと私から手を離さないだろうから。
蒼は私の返事を聞くと満足そうに笑い、私の右手からやっと手を離した。
「よし。それじゃあ行こう」
蒼の真剣な声を合図に生徒たち3人の体とついでに私の体が蒼の風の能力によって浮く。
そして蒼を先頭に私たちは低空飛行で移動を始めた。
足を動かさず飛ぶことによって移動のスピードが先ほどよりも格段に上がる。
気絶している生徒以外は、全員、進む方へ体を向けているが私は逆、つまり後ろを向いて妖の姿を注視していた。
ドッドッドッ!と暗闇から先程の泥の妖の大きな足音が響き渡る。
思っていた通りの展開だ。
やはり追い付かれそうだ。
じっと暗闇を睨み続けているとついに泥の妖の姿が私の前に現れた。
「ねぇ!俺を殺す気なの!?」
私は泥の妖に大きな声で問いかけてみる。
『殺す!人間は!殺す!』
妖からすごい殺気を感じる。
予想通りの返事を妖から聞いた私は不敵に笑った。
「俺は強いよ!死にたいの!?」
ボウ!と両手に最大限大きな火を出して妖を脅してみる。
無駄な殺生は本当にしたくない。一番は戦意喪失して、さっさと退散して欲しいのだ。
『死んでもいい!人間を殺せるのなら!』
「死んだら何もできないでしょうが!」
『うるさいうるさいうるさい!』
私の説得虚しく妖の大きな手が私を思いっきり叩こうと凄い勢いで振り下ろされる。