2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
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妖との戦いは明け方まで続いた。
まだ食堂へ避難できていない生徒の保護を優先させながらも合宿所内にいる妖と戦い、その存在を排除する。
これを何度も何度も繰り返して朝がやって来た。
結果から言うと今回の事件では誰も死ななかった。
全員が生き残った。
残念ながら意識不明の重体の人もいるが、それでも全員が生きていることが大切だった。
そして私は逆に一晩にして多くの妖の命に手をかけた。
彼らは皆、人間を殺そうとする敵で、私たちにとって純粋な悪でしかなかった。
それでもやっぱり命を刈り取る瞬間は胸が痛い。
「浮かない顔しているね」
全てが終わり、合宿所内の安全確認をしながら蒼と歩いていると蒼が笑顔で、だが、どこか心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「…疲れだよ」
そんな蒼に疲れた顔で私はにっこりと笑う。
一晩中、私たちは神経を尖らせて動いていた。あながち間違ってはいないはずの答えだ。
正直に妖を殺し続け、心が疲弊しているとは今は言えなかった。
おそらく否定の言葉が返ってくる蒼と口論する元気は今の私にはない。
「…そっか。そうだね。さすがに一晩中は堪えるね」
蒼も私と同じように疲れた顔でにっこりと笑っている。
蒼も私も大きな怪我は負わなかったものの、全身小さな傷だらけで身につけている服もボロボロ。
2人とも満身創痍だった。
私たちだけではない。
昨夜、ここにいた能力者はみんな例外なくそうだった。
意識があるだけ私たちはまだマシなんだろう。