2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
『…かすり傷一つ許さないからね』
『怪我ひとつせずに絶対に無事に帰ってくるって約束して』
ふと、朱との電話内容が頭を過ぎる。
ああ、今の私を見ると朱は間違いなく、怒るだろうな。
何一つ約束を守れていないから。
『やっぱり僕も無理矢理にでも着いていけばよかった』
私の中の朱がすごく不貞腐れている。
うん、絶対こう言うだろうな。
私は約束を破ってしまい、怒るであろう朱の姿を想像して苦笑いを浮かべた。
「…」
私は未来を変えられた。
あの惨劇を回避できた。
未来は変えられる。
それならきっと私が独りになって死んでしまう未来も変えられる。
そんな未来はそもそもないのだと神様にも言われたし。
『ええ、その通りですよ、紅』
疲れ切った私に神様の優しい声が聞こえた。