2度目の人生で世界を救おうとする話。前編
「…しゅ」
すぐに朱の名前を呼んで朱を迎え入れようと思ったが寸前のところで私は慌てて朱の名前を飲んだ。
そう言えばろくに確認せずに扉を開けさせて琥珀を困らせたことがあった。
もしかすると朱ではない可能性もあるのだからそれを頭に入れておかなければならない。
「…兄さん?僕だよ」
だが、扉の向こうから聞こえてきた不思議そうな声は予想通り朱のものだった。
私がいつものようにすぐに返事をしなかったからこの反応なのだろう。
やっぱり朱だった!よかった!
「しゅ…」
朱だとわかり、もう不安要素はない為、扉の向こうにいる朱に改めて声をかけようとした。
ボウ!
「え」
だが、私が見つめていた扉が一瞬で炎に焼き消されたことによってそれは叶わなかった。
え。
扉の前にはひどく焦っている様子の朱が立っている。
え。
頭の中で何度も何度も「え」と言っている。いや、これだけ言っているので口に出してしっかり「え」て言っているかもしれない。